中高6年間の一貫教育で、進学実績にも注目が集まる中高一貫校。
特に「公立」の中高一貫校は私立ほど高い学費もかからず、質の高い教育が受けられると注目が集まっています。
しかし私立中学の入試とは選抜方法が異なり、公立ゆえに向いているお子さんも私立とは若干違いがあるようです。
受検の形式や入学後のことも考えると公立中高一貫校はどのようなお子さんに向いているのか、元塾講師がまとめてみました。よかったら参考にしてください。
公立中高一貫校の目的
中高一貫教育制度は1999年(平成11年)より導入されました。
中学・高校の6年間を接続し計画的なカリキュラムのもとで、生徒の個性と創造性を伸ばすことを目的としています。
私立校ではすでに中高一貫教育が広まっていたことを背景に、お子さん一人ひとりの個性に合った教育が受けられる機会を広く与えるべき、という考えがあったようです。
参考:文部科学省「中高一貫教育Q&A:趣旨・目的に関すること」
完全型・併設型・連携型の違い
中高一貫教育には完全型・併設型・連携型があります。一般的に完全型・併設型が中高一貫校と呼ばれ、高校入試はありません。
完全型(中等教育学校)は6年間の一貫教育が行われ、高校から外部の募集は行われません。
併設型(附属中・高)は6年間の一貫教育が行われ、高校からの生徒募集を行います。一般的に外部からの募集は少なめ、募集を停止している学校もあります。
連携型は異なる設置者(複数の学校)が連携したもので入学は選抜制になります。
高校内容の先取りやグローバル教育も
各中高一貫校で特色ある教育が提供されています。中高一貫校では高校で習う範囲を中学で教えることもできる、柔軟なカリキュラムを組むことが可能です。
いわゆる進学校の公立中高一貫校では難関私立校と同様の教材を使用したり、先取りのカリキュラムが提供されている学校が多いです。グローバル教育や理系の教育(SSH指定校などで)に力を入れているところもあります。
公立中高一貫校の選抜方法
公立中高一貫校の選抜では私立中学で行われる入試とは異なる検査が行われます。そのため受験ではなく「受検」と表記されることが多いです。ただし塾により中学受験の一形態として受験とされていることもあります。
公立中高一貫校の選抜方法の例(※各地域・学校により選抜方法は異なります。)
- 適性検査
- 面接
- 調査書(報告書)
- 実技(特別枠、特定のコースなど)
適性検査
適性検査は多くの公立中高一貫校の選抜で行われています。(学校により「作文」とされているところも。)
小学校で学習する範囲内ということですが、難易度は高め。教科を横断した内容が出題され、思考力・判断力・表現力が見られます。長文のため文を素早く読み取り、情報を整理する力が必要です。
作文や記述問題が出されることが多いです(選択問題のみの地域・学校も)。4教科がメインですが英語を出題する学校もあります。
面接
各地域・学校により面接が行われることもあります。個人面接やグループ面接、ディスカッション形式の面接など。
調査書(報告書)
調査書(報告書)が総合成績の一部に入ることがあります。一般的には5・6年か6年の成績。4年生の成績が入る学校も。
適性検査と比較すれば調査書(報告書)の配点の割合は低い傾向にありますが、高校受験の内申点同様良い評定を取っておいた方が有利になります。
※選抜方法は各地域・学校により異なりますので、詳しくは実施要項などでご確認ください。
公立中高一貫校に向いているお子さんは?
公立中高一貫校はその選抜方法や入学後のこともふまえ、次のようなお子さんに向いていると考えられます。
各公立中高一貫校の教育方針と合っている
公立中高一貫校により教育方針や、どのような人材を育成したいかその目標が異なっています。保護者の方はもとよりお子さん自身もその方針に納得していることが前提となります。
長文問題が得意
適性検査は長い文章で出題されることが多いです。日頃から本をよく読んでいる、文を読むのが速い、長い文章の問題も苦労せず解けるようなお子さんは適性検査で有利です。
知的好奇心が高く、難しい問題にも取り組める
難しい問題に当たってしまったときも「どうやって考えるんだろう」「なぜなんだろう」と深く考えいろいろ試行錯誤してみる、知的好奇心の高いお子さんは適性検査型の問題に向いています。
文章や言葉で自分の考えを表現することが得意
公立中高一貫校の選抜では適性検査での記述問題、作文、また面接においても表現力が要求されることがあります。ただ主張するだけではなく、伝える相手が納得できるような表現力が必要です。
学校の成績が良く、積極的に学校生活に参加している
学校での成績が良いだけでなく、授業中に積極的に発言したり、クラスや学校の活動に参加してリーダーシップを発揮しているお子さんは「公立」向き。報告書や面接でも良い評価をもらえそうです。
将来の夢がある
今後どのような形で社会貢献をしたいか将来の夢や展望があるお子さんなら、方針に納得して入学できた公立中高一貫校に入ってからも継続して努力が続けられるでしょう。
向いていても難しい、公立中高一貫校の受検事情
学校のテストの点数も生活態度もとても良く、知的好奇心旺盛。適性検査型の問題もすらすらと初めから解いてしまう。
漢字も得意で作文もうまい。勉強をさぼることなど決してなく、保護者がいちいち言わなくても自分から進んで勉強できる・・・。
いかにも公立中高一貫校向きのお子さんの特徴です。
筆者はかつて都内個別指導塾で講師(及び運営)をしていましたが、このような公立中高一貫校向きのお子さんたちが適性検査対策のために入塾してくることがありました。
しかし都立が超高倍率だった時代、合格者を出すことは非常に難しかったです。
模試の判定もあまり当てになりませんでした。毎回A判定のお子さんが合格をもらえなかったこともあれば、D判定などあまり良い成績がもらえたことがないお子さんで「逆転合格」がもらえたこともありました。
今は都立の倍率はだいぶ落ち着いてきましたが、決して低いわけでもありません。(今でも当日になるまでわからないという話も聞かれます。)また今でも高倍率の公立中高一貫校はあちらこちらであります。
適性検査はトレーニング次第?
公立中高一貫校に向いているお子さんの特徴を上にあげましたが、「うちの子は記述問題は苦手そう」「難しい問題に取り組めるか心配」という保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん誰でも絶対に大丈夫とは言えませんが、トレーニング次第である程度力を伸ばすことは可能です。
多くの塾で公立中高一貫校コースが設置されており、公立中高一貫校受検向けの通信教育もあります。もちろん市販教材で自宅学習を進めてみても。
早めに対策を進めることで合格の可能性を高めることができます。
まとめ
公立中高一貫校に向いているお子さんの特徴を、選抜方法などとともに見てきました。
学習意欲が高く成績が良い、学校生活に積極的に関わっている、思考力・判断力・表現力などが高い、将来どのような形で社会貢献したいか展望があるようなお子さんは公立の中高一貫校に向いていると考えられます。
ただし適性検査や作文で求められる思考力・判断力・表現力はトレーニング次第で伸ばすことも可能です。
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