中学受験の転塾で成績は上げられる?【転塾がおすすめなお子さん、転塾せずに成績を上げる方法】

中学受験の転塾で成績は上げられる?【転塾がおすすめなお子さん、転塾せずに成績を上げる方法】

中学受験の進学塾に通っているものの、成績がいまひとつ。勉強は頑張ってるようだけど、みんなも頑張るから成績が変わらず、クラスもなかなか上がらない。もっといい塾に転塾した方が良いのかな・・・とお悩みでしょうか?

筆者は個別指導塾で塾講師をしており、進学塾で成績UPのためにいらっしゃるお子さん、進学塾から転塾してきたお子さんを担当することがあり、保護者の方やお子さんから直接塾の話を聞くことが多数ありました。

お子さんと塾自体が本当に合わない場合は、転塾が良い効果をもたらすことがあると思います。しかし中学受験の転塾はリスクがあることも確かです。

この記事では塾講師である筆者が独自の視点で、転塾で成績を上げられるのか、成績が上がらない原因、転塾以外の解決方法についてまとめました。お子さんのケースと比較して、転塾するかどうかのヒントにしていただければと思います。

(※塾講師は執筆時点で。)

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中学受験の転塾で成績は上げられる?【転塾のリスク】

中学受験生のご家庭で、転塾したい理由はいろいろあるかと思います。おそらく一番多い理由は「成績が上がらない」ことではないでしょうか。

クラス分けテストや模試の結果を見てため息。なんとか今のクラスをキープできているけれど、このまま浮上できないのでは・・・

と不安になり、転塾をお考えになっているご家庭もあるでしょう。

しかし転塾で成績が上がるとは限りません

基本的に進学塾は中学入試突破のためのノウハウを教えるところです。そのため成績が伸び悩んでいるという理由で転塾しても必ずしも成績UPが可能とはいえません。

転塾にはリスクがある

進学塾で転塾すると次のようなリスクがあります。

  • カリキュラムの違いによる負担
  • 解法が違い混乱する
  • 環境の変化で精神的な負担
  • 前より遠くの塾だと身体的な負担
  • 転塾してもお子さんに合わないかもしれない

特に中学受験の進学塾で転塾すると、カリキュラムの違いによる負担は大きいでしょう。転塾したことでカリキュラムに抜けがあると特に算数は難しいかもしれません。前の塾と習ったやり方と違うことでお子さんが混乱することもあるかもしれません。

カリキュラムや解法以外にも、塾の雰囲気とか授業の進め方、宿題のチェック度合など、以前の塾とは勝手が違い、なれるまで時間がかかる可能性もあります。

またお子さんに合う塾を・・・と探して見つけた塾が遠く、通うのが思ったより負担ということもありえるかも。

そして転塾した塾が必ずしもお子さんに合う塾とは限らないというリスクもあります。やっぱりうまくいかなかった・・・とまた転塾する羽目になるとお子さんの精神的な負担もいっそう高まるでしょう。

お子さんの気持ちは?

保護者の方は転塾させたいけれど、お子さんの気持ちはどうなのでしょうか?今の塾で満足しているなら転塾を嫌がるかもしれません。先生の説明もわかりやすいし、1人で勉強してたときよりずっと良い!・・・という場合は、何か勉強の仕方を変えた方がいいのかもしれません。塾が楽しすぎて(あまり厳しいことを言われなくて)お友達と遊び感覚になっているだけなら、転塾が良い効果をもたらすかもしれません。

逆に保護者の方はそうでなくても、お子さんが今の塾を嫌がっている場合もあるかもしれません。塾の雰囲気になんだかなじめない、質問したくてもいつも生徒がたくさん並んでて質問しづらい、そもそも質問しにくい雰囲気・・・であれば転塾という選択肢もありでしょう。もちろん転塾以外にもご家庭でのフォロー、個別や家庭教師の併用が良い結果をもたらすこともあると思います。

中学受験生のご家庭で転塾したい理由は?

中学受験のご家庭で転塾したい(させたい)理由として、次のような理由が考えられるでしょう。

  • 成績が上がらない(志望校のレベルに届かない)
  • わからないところを質問しづらい
  • ピリピリした雰囲気が合わない
  • 先生に相談しにくい
  • 指導内容が志望校と合わない
  • 通塾が負担(習い事と両立できない、送迎の問題)

成績が上がらない

上の理由の中でも「成績が上がらない」という理由は中学受験に限らず転塾の理由として最も多いのではないかと思います。ただこの成績が上がらない理由にはいろいろ原因が考えられます。成績低迷の原因が塾側にあるなら、確かに転塾が解決策になるでしょう。成績が上がらない原因については後の章でもう少し掘り下げてみます。

塾自体が合わない

(成績とは関係なく)わからないところがあっても質問しづらい、塾の雰囲気がピリピリしてる、勉強のことで相談したいのになんとなく相談しづらい雰囲気・・・といった塾のホスピタリティ面でも問題が気になるご家庭やお子さんもいるかもしれません。多感で周囲をコントロールするのが難しい小学生、メンタル面に良くなさそうなら転塾は良い選択肢かも

指導内容が志望校と合わない

集団塾での指導内容が志望校と合わないというのは中堅校ではあり得ることかもしれません。特に大手進学塾だと難関~最難関にあわせた教材で志望校の入試内容とかけ離れているということも。もちろん入塾当時はまだ受験勉強もスタートしていなくて、どのレベルの志望校が受けられるのかイメージもつかなかったかもしれませんが・・・。このようなケースなら個別指導や中堅校対策コースのある塾に転塾することで成功するかも。

通塾が負担

難関校を目指しているし、大手進学塾に通わなくては・・・と「長距離通塾」をしているご家庭も実際あるようです。しかし実際通い続けていると負担だったり、自習室の「居残り」もあって(面倒見が良いのはうれしいけど)帰りが遅くなる。他の習い事との兼ね合いもあって通うだけでクタクタになっててかわいそう・・・。

成績が上がらない原因は?

成績が上がらないから転塾しようとお考えになるご家庭は多いでしょう。進学塾ではありませんが、事実筆者が過去に在籍していた塾でも(受験終了を除けば)、転塾や退塾の理由は成績の低迷がほとんどです。

ここで1歩踏み込んで、成績が上がらない原因も考えてみましょう。

  • 塾(クラス)のレベルが合っていない
  • 先生の教え方が合わない
  • 家庭学習に問題がある(勉強不足、やり方が良くない他)

塾(クラス)のレベルが合っていない

入塾当時はよくわからず難関校の実績が高い塾を選んでしまったけれど、実力や本人・親の希望も考慮すると志望校は中堅校、なんだかレベルが合っていないみたい、頑張ってもいつも下の方のクラスでモチベも上がらない・・・というなら、中堅校(お子さんの志望校)にも実績の高い塾に転塾した方が良いでしょう

逆に上のクラスに入ってプレッシャー、クラスの中でいつも成績が悪くて自己肯定感も下がりまくり・・・なら、塾が対応可能であればクラスを替えてもらうことで解決するかもしれません。授業のレベルが物足りなくなる恐れはありますが。

なお難関クラスを目指しているなら大手の中学受験進学塾であればどこでも大丈夫です。お子さんが塾に満足していて成績も一定のラインをキープできてるなら。塾の合格実績が発表されて、なんとなく不安にかられてしまう保護者の方もいるかもしれませんが、リスクを考えれば(お子さんが満足してるなら)転塾はあまりおすすめできません。ご負担でなければ、他塾生も受講可能な志望校対策講座などをとるのは良いと思います。

先生の教え方が合わない

大手進学塾であれば先生のスキル不足ということはないと思いますが、教え方がお子さんに合わないということはあるかもしれません。合う、合わないにあまり振り回されていると、結局どの塾、どの先生にもアラが見えてしまうものです。

筆者が塾で見ている生徒も、進学塾の先生への不満を毎回ブツブツ言ってますが、先生が変わるたびに「前の先生の方が良かった~」と言ってます。(文句を言いつつも模試ではいい成績出せてるので、実は指導は悪くない?)

自習室の活用や、個別指導・家庭教師などのサポートで解決できることもあります。先生の宿題が多すぎてアップアップ、テスト対策どころではないという状況なら、塾に相談して宿題の量を調節してもらったりすることも可能です。(これも対応してもらえるかは塾にもよりますが・・・)

もし地元の個別指導塾とか、中学受験専門でない塾にお通いで成績が低迷しているのなら、先生のスキル不足という可能性が高いかもしれません(指導システムにも問題があるのかも)。この場合は迷わず転塾がおすすめです。

家庭学習に問題がある

お子さんの成績低迷が家庭学習に問題がある場合は、転塾だけでは解決できません。例えば次のような場合です。

  • 家庭での勉強不足(宿題をしていない)
  • わからないところがそのままになっている
  • 勉強はしているけれどやり方が良くない

中学受験も高校受験も見ている塾講師からすると、控えめに言って中学受験は高校受験の何倍も過酷だと思います。それを人生経験の少ない小学生に課しているわけですから、当然大変です。高校受験だってなかなかスイッチ入りませんから。

ですので当然ご家庭のサポートは必要になります。(まれに手のかからないお子さんもいらっしゃるようですが・・・奇跡的な話かも)

  • 塾であまり宿題チェックが厳しくない場合は、お子さんも「やらなくてもいいのかな?」と適当に済ませるかもしれませんので、保護者の方がチェック。
  • 塾や家庭学習で進めたノートを見て、本当に理解できているかチェック。わからないところは塾で聞いてくるよう指示を出す。暗記系の課題は保護者の方がチェックしたり暗記用ノートを作成。

塾の保護者会でより具体的なサポートの仕方について、塾からアドバイスがあるかもしれません。

面倒見の良い塾もありますが、やはり何もかも塾に丸投げ・・・とはいかないようです。(これは個別指導でも、家庭教師でもしかり。)

転塾がおすすめなお子さんは?【転塾とその他の解決方法】

転塾か別の解決方法が良いかはケース・バイ・ケースですが、大まかには次のようにまとめられるでしょう。

  • 塾とレベルが合っていない⇒転塾(レベルの合う進学塾)
  • 塾の雰囲気が合わない⇒転塾(雰囲気が合う進学塾)
  • 通塾が負担⇒転塾(近くの塾)
  • 今のクラスが難しい⇒塾に相談、個別指導・家庭教師の併用
  • 勉強不足⇒塾に相談、自習室の活用、家庭学習のサポート
  • やり方がわからない⇒塾に相談、個別指導・家庭教師の併用
  • 苦手教科の対策⇒塾に相談、個別指導・家庭教師の併用
  • 志望校対策をプラス⇒他塾の講習・講座、個別指導・家庭教師の併用
  • 志望校に特化した対策⇒他塾の講習・講座、個別指導・家庭教師へ切り替え

転塾するタイミングは?

カリキュラムのことを考えれば転塾は5年生の夏までが良いでしょう。進度にズレがあっても夏休みを利用して巻き返しが可能です。

5年(新6年)の2月が近づくと転塾を考えるご家庭も増えるかもしれませんが、進度の遅い塾から速い塾に転塾する場合カリキュラムの抜けがあると追いつくのに苦労する恐れがあります。

筆者のいた塾で5年生まで日能研、新6年から個別指導塾に転塾というお子さん(女子)もいらっしゃいました。2教科受験で習い事と両立しながら志望校対策をしたかったのと、穏やかな雰囲気の個別指導塾がお子さんの性に合っていたようです。こちらのお子さんの場合はN(かY)偏差値で60前後はもともとあり、志望校のレベルはクリアしてました。志望校にも合格。

転塾先は?

お子さんの行きたい学校のレベルに合った塾選びがポイントとなります。

上位~難関なら大手進学塾難関に実績の高い中堅進学塾がおすすめです。進学塾から進学塾の場合は各塾のカリキュラムに注意が必要です。

四谷大塚と早稲アカは同じ予習シリーズを使っているので転塾もしやすいかと思われます(塾のカラーが違いますが)。

日能研は他の塾に比較するとゆっくりめ(灘対策のコースは別です)ですが、6年時にかなりタイトなスケジュールになる印象を受けます。(もちろん他の進学塾も6年時は大変ですが)

中堅~上位なら(守備範囲が広い)四谷や日能研、栄光や市進など。地元の中堅~上位校なら志望校で実績のある地域の進学塾もおすすめです。

なお地域の個別指導塾を選ぶ場合は合格実績のある塾からお探しになってください。中学受験の指導がちゃんとできる講師は普通の個別指導塾ではなかなかいません。

中学受験「専門」や進学実績の高い進学塾型の個別指導がおすすめです。

転塾せずに成績を上げるなら

クラスのレベルが合っていないみたい、勉強のやり方に問題があるのかも、苦手教科の伸び悩み・・・があればまずは塾の先生に相談、自習室の活用や家庭学習のアドバイス、ご家庭での学習サポートで成績アップが期待できるかも。

ただ家庭学習のサポートとはいっても共働きのご家庭だとなかなか大変かもしれません。もちろん専業主婦(夫)のご家庭でもずっとお子さんの勉強を見てるわけにもいかないでしょう。難しければ個別指導や家庭教師の併用がおすすめです。

個別指導塾を利用する

個別指導塾だと自習室が開放されているところが多いので、授業でわからないところを聞いて自習室で塾の宿題を終わらせることもできます。家だと集中できないお子さんにメリットが多そうですが、問題は講師の質。

中学受験にも対応していることをうたっている個別指導塾でも、実際中学受験の指導ができる講師は限られていることが多々あります(筆者の経験上)。

プロ講師や中学受験経験者の講師が多数在籍し、実績のある塾選びがおすすめです。

家庭教師を利用する

進学塾と併用だと個別指導塾にも通うのは負担かもしれません。家庭教師なら先生の方が来てくれるので通うより負担も少ないでしょう。お子さんに家庭学習の習慣があってお通いの塾へのこだわりがない場合、志望校対策で家庭教師への「切り替え」という選択肢も。

おすすめは中学受験で実績のある家庭教師センターです。難関校対策や苦手教科の引き上げにはプロ講師がおすすめ。若い先生だと甘えてしまいそうな場合もプロの先生の方が良いでしょう。年上の先生だと質問しづらいお子さんなら実績のある家庭教師の学生講師を。

まとめ

中学受験の転塾はリスクもありますので、よほど塾が合っていないという場合以外ではあまりおすすめはできません。成績に関しては家庭学習、塾の利用の仕方などで改善できる場合もあります。まだ受験勉強に不慣れなお子さんもペースをつかめれば塾の授業ー家庭学習ーテストのサイクルもつかめるかも。

しかしどう冷静に判断しても今の塾ではお子さんには難しい・・・という場合はお子さんの気持ちもよくご確認の上、転塾を検討すると良いでしょう。今回の記事が転塾するかどうか、お子さんに最適な選択の何らかのヒントになれば幸いです。