古文の助詞の種類と一覧、助詞の識別に関するまとめと問題です。
格助詞、接続助詞、係助詞、副助詞、終助詞、間投助詞のはたらきや格助詞の接続と意味の一覧、助詞や助動詞の識別問題によく出るものなどを見ていきます。
【古典文法】助詞の種類6つとはたらき
助詞はさまざまな語に接続する付属語で、助動詞と違い活用しません。古典文法の助詞には、格助詞、接続助詞、係助詞、副助詞、終助詞、間投助詞があります。
格助詞
前の語が後の語に対してどのような格なのかを示す(例:の・が・に・へ・と・より・にて・して)
接続助詞
前の文節と後の文節をつなげる(例:ば・が・に・を・とも・ど・ども・ながら・ものを・ものの・ものから)
副助詞
意味を添え、後に続く用言を修飾する(例:だに・すら・さへ・のみ・ばかり・まで・しも・し・など)
係助詞
意味を添え、下の活用語に一定の結び方を求める(例:は・も・ぞ・なむ・こそ・や・やは・か・かは)
終助詞
文末におかれ、禁止や希望・願望、詠嘆・感動などを表す(例:な・そ・ばや・なむ・てしか・もがな・かな・かも・は・も・かし・ぞ)
間投助詞
文中や文末で詠嘆や感動・呼びかけ、語調を整える(例:や・よ・を)
【古典文法】助詞の一覧
古文で使われる助詞の一覧です。
格助詞(体言・連体形に接続) | |
---|---|
の | 主格「~が」 連体修飾「~の」 体言の代用「~のもの・こと」 同格「~で」 比喩(連用修飾)「~のように」 |
が | 主格「~が」 連体修飾「~の」 体言の代用「~のもの・こと」 同格「~で」 |
を | 動作の対象「~を」 経過する場所・時「~を(通って)」 動作の起点「~を、~から」 |
に | 場所・時間「~に」 動作の対象「~に」 動作の目的「~ために」 変化の結果「~に、~と」 引用「~と」 比較の基準「~と(比べて)」 比喩「~ように」 |
へ | 動作の方向「~へ、~に向かって」 |
と | 動作の相手「~と」 変化の結果「~と」 引用「~と」 比較の基準「~と(比べて)」 比喩「~ように」 |
より | 動作の起点「~から」 比喩の基準「~より」 経由する場所「~から」 手段・方法「~で、~によって」 即時の反応「~するやいなや、~とすぐに」 事物の限定「~より」 |
にて | 場所・時間「~で、~に」 手段・材料「~で、~によって」 原因・理由「~ので、~から」 |
して | 手段・方法「~で、~によって」 動作の相手「~と(ともに)」 使役の相手「~に命じて、を使って」 |
接続助詞(さまざまな活用形に接続) | |
ば | 未然形接続 → 順接の仮定条件「もし~ならば」 已然形接続 → 順接の確定条件「~ので、~から、~ところ、~と(いつも)」 |
が・に・を | 連体形接続
単純接続「~が、~と、~すると」 |
とも | 終止形と形容詞の連用形に接続 逆接の仮定条件「~としても」 |
ど・ども | 已然形に接続 逆接の確定条件「~としても」 |
ながら | 連用形と形容詞・形容動詞の語幹に接続 動作の並行「~ながら」 逆接の確定条件「~のに、~が」 |
ものを ものの ものから |
連体形に接続 逆接の確定条件「~が、~のに」 |
副助詞(種々の語に接続) | |
だに | 体言・連体形・助詞に接続 類推「~さえ」最小限の限定「せめて~だけでも」 |
すら | 体言・連体形・助詞に接続
類推「~さえ」 |
さへ | 体言・連体形・助詞に接続 添加「その上に~までも」 類推「~さえ」 |
のみ | 種々の語に接続 限定「~だけ、~ばかり」 強調「ひどく~、とりわけ、ただ~だけ」 |
ばかり | 種々の語に接続 限定「~だけ、~ばかり」 程度「~ぐらい、~ほど」 |
まで | 種々の語に接続 範囲・限度「~まで」 程度「~ほど、~ぐらい」 |
しも | 種々の語に接続 強調「~に限って、よりによって」 |
し | 種々の語に接続 強意(特に訳さない) |
など | 種々の語に接続 例示「~など」 引用「~などと」 婉曲「~など」 |
係助詞(種々の語に接続) | |
は | 他との区別・強調「~は」 文末は終止形 |
も | 並列「~も」 同類のもの「~も」 強意「~も」 文末は終止形 |
ぞ なむ |
強意 文末は連体形 |
こそ | 強意 文末は已然形 |
や やは か かは |
疑問「~か」 反語「~であろうか、いや~でない」 文末は連体形 |
終助詞(文末につく) | |
な | 動詞の終止形(ラ変は連体形)に接続 → 禁止「~な」(「そ」とともに使われる) 文末、終始した形、体言に接続 → 詠嘆・感動「~よ、だなあ」 |
そ | 動詞の連用形(カ変・サ変は未然形)に接続 → 禁止「~な」(「な」とともに使われる) |
ばや | 未然形に接続 自己の希望・願望「~したい」 |
なむ | 未然形に接続 他に対する希望・願望「~してほしい」 |
てしか てしかな にしか にしかな |
連用形に接続 自己の希望・願望「~したい、したいものだなあ」 |
もが もがな もがも がな |
体言や形容詞の連用形に接続 自己の希望・願望「~がほしい、~があればいいなあ」 |
か かな かも |
体言や連体形に接続 詠嘆・感動「~よ、~だなあ」 |
は・も | 文末に接続 詠嘆「~よ、~ことよ、~だなあ」 |
かし・ぞ | 文末に接続 念押し・強意「~よ、~だよ」 |
間投助詞(文中・文末につく) | |
や | 詠嘆「~よ、~だなあ」 呼びかけ「~や、~よ」 語調を整える |
よ | 詠嘆「~よ」 呼びかけ「~よ」 |
を | 詠嘆「~よ、~ね、~なあ」 強意「~ね、~よ」 【~を…み】原因・理由「~が…ので」 |
【古典文法】よく出題される助詞の識別
助詞の種類や他の品詞との識別、接続する活用形によって意味が変わるものについて確認します。
格助詞と接続助詞「が・に」 識別
体言に接続すれば格助詞、活用形に接続すれば接続助詞です。
雀の子を犬君が逃がしつる。(格助詞の「が」)
粟津の松原へ駆け給ふが、(接続助詞の「が」)
君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば(格助詞の「に」)
乗りて渡らむとするに(接続助詞の「に」)
格助詞と接続助詞と終助詞の「を」識別
体言に接続すれば格助詞、活用形に接続すれば接続助詞、文中・文末におかれ、なくても意味が通じれば間投助詞です。
かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて、(格助詞の「を」)
まかでなむとし給ふを、暇さらに許させ給はず。(接続助詞の「を」)
とく装束きてかしこへを参れ。(間投助詞の「を」)
係助詞と終助詞、推量の「なむ」識別
係助詞の「なむ」は連体形で結び、終助詞の「なむ」は未然形接続で文末におかれます。推量の「む」が使われる「なむ」は<連用形+完了「ぬ」未然形+推量「む」>または<ナ変未然形+推量「む」>になります。
もと光る竹なむ一筋ありける。(強意の係助詞「なむ」)
今は、いかにもいかにもかけて言はざらなむ(他への願望の終助詞「なむ」)
船に乗りなむとす(ラ変「乗る」連用形+推量[意志]の助動詞「む」)
とく往なむ(ナ変「往ぬ」未然形+推量[意志]の助動詞「む」)
未然形+なむは「~してほしい」という他者への願望、連用形+なむは「きっと~しよう」という強い意志を表します。
係助詞「ば」未然形と已然形接続
「未然形+ば」で「順接の仮定条件(~ならば)」、「已然形+ば」で「順接の確定条件(~なので)」になります。
世の中にたえて桜のなかりせば(順接の仮定条件)
風吹けば、え出で立たず。(順接の確定条件)
終助詞「な」接続による意味の違い
終止形またはラ変連体形+「な」は禁止を表し、終始した文末+「な」は詠嘆・感動を表します。
あるじなしとて春を忘るな(禁止の「な」)
花の色は移りにけりないたづらに(詠嘆・感動の「な」)
【古典文法】助詞の総合問題
問1 次の下線部の助詞の種類を答えましょう。
(※ 助詞の種類 … 格助詞、接続助詞、係助詞、副助詞、終助詞、間投助詞)
(1) 粟津の松原へ駆け給ふが、正月二十一日、入相ばかりのことなるに
▼答え(2) かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて
▼答え(3) とく装束きてかしこへを参れ。
▼答え(4) もと光る竹なむ一筋ありける。
▼答え(5) 今は、いかにもいかにもかけて言はざらなむ、ただにこそ見め。
▼答え(6) ぬかづきなどいふもののやうにだにあれかし。
▼答え(7) 「翁丸」とだに言へば、喜びてまうで来るものを、呼べど寄り来ず。
▼答え(8) 花の色は移りにけりないたづらに
▼答え(9) いかでこのかぐや姫を、得てしがな、見てしがな。
▼答え(10) 心得ぬことの多きなり。
▼答え問2 次の下線部の助詞の意味用法を、ア~ウから選びましょう。
(1) あるじなしとて春を忘るな
ア 禁止
イ 詠嘆
ウ 強意
▼答え(2) もと光る竹なむ一筋ありける。
ア 強意
イ 自己の希望・願望
ウ 他に対する希望・願望
▼答え(3) 昨日今日とは思はざりしを
ア 詠嘆・感動
イ 動作の対象
ウ 原因・理由
▼答え(4) 風吹けば、え出で立たず。
ア 順接の仮定条件
イ 順接の確定条件
ウ 逆接の確定条件
▼答え(5) 色こそ見えね香やはかくるる
ア 疑問
イ 反語
ウ 詠嘆
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