今回は中学理科、高校受験でよく扱われる、指示薬についてまとめました。
リトマス紙、BTB溶液、フェノールフタレイン溶液、ムラサキキャベツ液は酸性・中性・アルカリ性でどのように色が変化するか、石灰水、ヨウ素液、ベネジクト液、塩化コバルト紙、酢酸カーミン液(酢酸オルセイン液)などは何を検出し、どのように色が変化するかについて確認します。
主な指示薬を使用する実験や、確認問題についてもまとめています。
主な指示薬一覧
中学範囲(高校入試)でよく出題される、指示薬の一覧表です。
酸性・中性・アルカリ性
指示薬 | 酸性 | 中性 | アルカリ性 |
リトマス紙 | 青→赤 | 赤→青 | |
BTB溶液 | 黄色 | 緑 | 青 |
フェノールフタレイン溶液 | 透明 | 透明 | 赤 |
ムラサキキャベツ液 | 赤 | 紫 | 黄色 |
リトマス紙はリトマスゴケから作ったものです。
BTB溶液はBTB(ブロモチモールブルー)の粉末を水+アルコールに溶かしたもので、水に溶かしたときは黄色になっています。ふつうはそのままは使わず、アルカリを少し加えて青色にします。実験の問題で「青色のBTB溶液に呼気を吹き込んで緑色にし…」という表現がよく見られますね。呼気には二酸化炭素が多く含まれているので、酸性の方に進み(黄色っぽく)緑色になります。
ムラサキキャベツはアントシアニンという色素が含まれて、酸性かアルカリ性かでカラフルに色が変わります。強い酸性だと赤、やや強めの酸性で薄い赤、弱い酸性で赤紫、中性で紫、弱いアルカリ性で青、やや強めのアルカリ性で緑、強いアルカリ性で黄色になります。
その他の指示薬
指示薬 | 色の変化 |
石灰水 | 二酸化炭素→白くにごる |
ヨウ素液 | デンプン→青紫色 |
ベネジクト液 | 糖→赤褐色の沈殿 ※加熱する ※ショ糖は検出できない |
塩化コバルト紙 | 水→青が赤(うすい赤、桃色)に変化 |
酢酸カーミン液(酢酸オルセイン液) | 核・染色体→赤 |
石灰水は水酸化カルシウムの飽和水溶液です。二酸化炭素がとけると炭酸カルシウムがつくられて白くにごります。
ヨウ素液は固体のヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶かしたものです。同様の成分が入っているヨードチンキ、うがい薬でもデンプン反応を調べられます。
ベネジクト液は加えてから加熱するのがポイントです。糖と反応し赤褐色の沈殿が起こりますが、この赤褐色の沈殿の正体は酸化銅(酸化銅(I) Cu2O)です。
主な指示薬と関わる実験
指示薬を用いる主な実験と結果について簡単にまとめました。(細かな実験の条件設定は省略しています。)
オオカナダモの光合成
試験管に呼気をふきこんで緑色にしたBTB溶液を入れます。この試験管にオオカナダモを入れて光をあてる試験管と光をあてない(アルミニウムはくでおおった)試験管、何も入れない試験管の3種の試験管を準備します。明るい場所に置いておくと下のような色になります。
試験管 | BTB溶液 | 呼吸 | 光合成 |
オオカナダモ+光 | 青色 | ○ | ○ |
オオカナダモ+光なし | 黄色 | ○ | × |
オオカナダモなし | 緑色 | × | × |
光をあてたオオカナダモは(呼吸もしていますが)光合成をして二酸化炭素を消費するので、BTB溶液は酸性とは逆方向のアルカリ性にもどります。
光をあてないオオカナダモは呼吸のみ行い、二酸化炭素が増えて酸性になるため黄色になります。何も入れてない試験管は変化しないので中性の緑色のままです。
だ液のはたらきとデンプン
4本の試験管を準備し、デンプンのりとだ液を入れた試験管とデンプンのりと水を入れた試験管を、40℃のお湯が入ったビーカーと氷水が入ったビーカーに入れます。ヨウ素液とベネジクト液の反応を見ますが、ベネジクト液は試験管に入れてから加熱します。加熱するときは沸騰石を入れて突沸を防ぎます。
ヨウ素液 | ベネジクト液 | |
デンプンのり+だ液+40℃のお湯 | 変化なし | 赤褐色の沈殿 |
デンプンのり+だ液+氷水 | 青紫 | 変化なし |
デンプンのり+水+40℃のお湯 | 青紫 | 変化なし |
デンプンのり+水+氷水 | 青紫 | 変化なし |
デンプンのりと水を入れた試験管はどちらのビーカーに入れた場合でも、ヨウ素液が反応し、ベネジクト液では反応がありません。デンプンが変化していないことを示しています。
40℃のお湯が入ったビーカーに入れたデンプンのりとだ液が入った試験管のみ、ヨウ素液が変化せず、ベネジクト液で赤褐色の沈殿が起こります。これはデンプンがだ液により分解されて糖になったためです。
ただし氷水の入ったビーカーに入れた同様の試験管では、逆にベネジクト液で変化がなく、ヨウ素液が青紫色になっています。低い温度ではだ液がデンプンを分解していないことがわかります。
つまりデンプンはだ液により糖に分解されるけれど、だ液がはたらくには40℃程度の温度が必要ということがわかります。
炭酸水素ナトリウムの分解
炭酸水素ナトリウム → 炭酸ナトリウム+水+二酸化炭素
(化学反応式)2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2
炭酸水素ナトリウムは3つの物質に分解されます。(中学理科範囲で3つに分解されるのはこれぐらいです。)
・炭酸水素ナトリウム → フェノールフタレイン溶液がうすい赤に(弱いアルカリ性)
・炭酸ナトリウム → フェノールフタレイン溶液が濃い赤に(強いアルカリ性)
・二酸化炭素 → 石灰水が白くにごる
・水→ 青い塩化コバルト紙が赤くなる
酸・アルカリの電気分解(イオンの移動)
水道水や硝酸カリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液で湿らせたろ紙の上に、赤色と青色のリトマス紙を置いて電流を流すという、イオンの移動実験です。(ろ紙を水道水や硝酸カリウム水溶液で湿らせるのは、電流を流れやすくするためです。)
水素イオンの移動
下の図で塩酸をしみこませたろ紙を置くと、どのろ紙が変化するでしょうか。
塩酸が水素イオン(H+)と塩化物イオン(Cl-)に分かれ、水素イオンが陰極に移動します。水素イオンは酸性を示し、青いリトマス紙を赤くします。そのためウのリトマス紙が赤く変化します。
水酸化物イオンの移動
水酸化ナトリウムがナトリウムイオン(Na+)と水酸化物イオン(OH-)に分かれ、水酸化物イオンが陽極に移動します。水酸化物イオンはアルカリ性を示し、赤いリトマス紙を青くします。そのためイのリトマス紙が青く変化します。
【問題編】主な指示薬
問1 酸性の水溶液は何色のリトマス紙を何色に変化させますか。
→答え問2 中性の水溶液は何色のリトマス紙を何色に変化させますか。
→答え問3 アルカリ性の水溶液は何色のリトマス紙を何色に変化させますか。
→答え問4 BTB溶液は酸性だと何色になりますか。
→答え問5 BTB溶液は中性だと何色になりますか。
→答え問6 BTB溶液はアルカリ性だと何色になりますか。
→答え問7 フェノールフタレイン溶液はアルカリ性だと何色になりますか。
→答え問8 フェノールフタレイン溶液は中性だと何色になりますか。
→答え問9 ムラサキキャベツは酸性だと何色になりますか。
→答え問10 ムラサキキャベツはアルカリ性だと何色になりますか。
→答え問11 石灰水に呼気を吹き込むと白くにごります。これは呼気に何が含まれているためですか。
→答え問12 ヨウ素液は何に反応して何色になりますか。
→答え問13 ベネジクト液は何に反応して何色の沈殿が起こりますか。
→答え問14 塩化コバルト紙は何の検出に利用されますか。またそれが検出されたとき、何色の塩化コバルト紙が何色に変化しますか。
→答え問15 酢酸カーミン液(酢酸オルセイン液)は核を何色に染めますか。
→答えまとめ
主な指示薬について見てきました。主な指示薬の色の変化を覚えておきましょう。
・リトマス紙 → 酸性で青→赤、アルカリ性で赤→青
・BTB溶液 → 酸性で黄色、中性で緑、アルカリ性で青
・フェノールフタレイン溶液 → アルカリ性で赤(他は透明)
・石灰水 → 二酸化炭素で白くにごる
・ヨウ素液 → デンプンに反応して青紫
・ベネジクト液 → 糖の検出、赤褐色の沈殿
・塩化コバルト紙 → 水の検出、青 → 赤
・酢酸カーミン液(酢酸オルセイン液) → 核・染色体を赤くする