イオンとは原子が電子を失ったもの、あるいは電子を受け取ったもので、+や-の電気を帯びたものです。水に溶けるとイオンに分離するものを電解質といいます。
今回は電解質が分離する様子を式で表した電離式の書き方、塩酸や塩化銅水溶液などの電解質水溶液で電気分解を行うと、イオンにどのようなことが起きるのか、さらに電気分解における電離式や化学反応式での表し方についても学習します。
電解質と非電解質
電離
塩化ナトリウムは水に溶けるとナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)に分かれます。このように物質を水に溶かしたとき陽イオンと陰イオンに分かれることを電離といいます。
電解質
電解質は水に溶けて電離し、電流が流れる物質のことです。電解質には以下のようなものがあります。
【電解質の例】
塩化水素、塩化銅、塩化ナトリウム、硫酸、水酸化ナトリウム
非電解質
水に溶かしても電離しない物質が非電解質です。非電解質になるものは中学理科の範囲では糖、デンプン、アルコール類と覚えておくと良いでしょう。
【非電解質の例】
ショ糖、ブドウ糖、エタノール、デンプン
電離式とは
電離式とは電解質が電離する様子を表したもので、化学式とイオン式で表します。
下に示した電離式のように、化学式→陽イオン+陰イオンが基本形となります。
【電離式】
塩化水素:HCl→H++Cl-
塩化銅 :CuCl2→Cu2++2Cl-
塩化ナトリウム:NaCl→Na++Cl-
水酸化ナトリウム:NaOH→Na++OH-
水酸化バリウム:Ba(OH)2→Ba2++2OH-
水酸化カルシウム:Ca(OH)2→Ca2++2OH-
硫酸:H2SO4→2H++SO42−
硫酸銅:CuSO4→Cu2++SO42−
硝酸:HNO3→H++NO3-
酢酸:CH3COOH→H++CH3COO-
アンモニア:NH3+H2O→NH4++OH-
二酸化炭素:CO2+H2O→2H++CO32-
アンモニアと二酸化炭素は単独ではなく水分子との反応で陽イオンと陰イオンに分かれています。
イオンの価数は勝手に変えられないので、CuCl2→Cu2++2Cl-をCuCl2→Cu2++Cl2-と書いたら間違いになります。
電離式を丸暗記するのは大変です。イオン式をしっかり覚えておけば、電離式が書きやすくなります。
【イオン式についてはこちらの記事でも説明しています。】
電気分解
電解質水溶液に電流を流すと、
陽極:陰イオンが引きつけられ、電子を渡す
陰極:陽イオンが引きつけられ、電子を受け取る
という現象が起きます。電子は導線を通って受け渡しされます。
塩化水素の電気分解
塩化水素(塩酸)を電気分解すると、次のようになります。
電離式:HCl→H++Cl-
陽極:塩化物イオン(Cl-)が引きつけられる→電子(e-)を1個渡して塩素原子(Cl)に→塩素分子(Cl2)になり塩素が発生する(2Cl-→Cl2+2e-)
陰極:水素イオン(H+)が引きつけられる→電子(e-)を1個受け取って水素原子(H)に→水素分子(H2)になり水素が発生する(2H++2e-→H2)
電気分解の化学反応式:2HCl→H2+Cl2
塩化銅の電気分解
塩化銅を電気分解すると、次のようになります。
電離式:CuCl2→Cu2++2Cl-
陽極:塩化物イオン(Cl-)が引きつけられる→電子(e-)を1個渡して塩素原子(Cl)に→塩素分子(Cl2)になり塩素が発生する(2Cl-→Cl2+2e-)
陰極:銅イオン(Cu2+)が引きつけられる→電子(e-)を2個受け取って銅原子(Cu)に→赤褐色の銅が陰極に付着する(Cu2++2e-→Cu)
電気分解の化学反応式:CuCl2→Cu+Cl2
塩化銅水溶液は青い色をしていますが、この色は銅イオンの色です。電気分解をすると銅イオンが減るので、青い色が薄くなっていきます。
電気分解と電離の違い
電気分解は電解質水溶液に電流を流して陽イオンを陰極に、陰イオンを陽極に移動させて分解すること、電離は水に溶けて陽イオンと陰イオンに分かれることです。
どちらも陽イオンと陰イオンに分かれていますが、電気分解では「電流を流して」分けます。
【問題編】電解質・電離式・電気分解
問1 次の中から電解質となるものを選びなさい。
エタノール 食塩 砂糖 ブドウ糖 デンプン
問2 塩化水素の電離式を書きなさい。
答えを確認問3 塩化銅の電離式を書きなさい。
答えを確認問4 水酸化ナトリウムの電離式を書きなさい。
答えを確認問5 水酸化カルシウムの電離式を書きなさい。
答えを確認問6 酢酸の電離式を書きなさい。
答えを確認問7 塩化銅水溶液を電気分解すると、陽極では何が発生するか。
答えを確認問8 塩化銅水溶液を電気分解すると、陰極に何が付着するか。またその物質は何色か。
答えを確認問9 塩化銅水溶液は何色か。
答えを確認問10 塩化銅水溶液を電気分解すると、問9で答えた色がどうなるか。
答えを確認まとめ
・水に溶かして電離する物質 → 電解質、電離しない物質 → 非電解質
・非電解質は糖、デンプン、エタノールなどのアルコール
・電離式は「化学式→陽イオン+陰イオン」
(例)NaCl→Na++Cl-
・電気分解 → 陽極では陰イオンが引きつけられて電子が渡されて原子(分子)に、陰極では陽イオンが引きつけられて電子を受け取って原子(分子)になる
(例)塩化銅の電気分解(陽極:2Cl-→Cl2+2e-、陰極:Cu2++2e-→Cu)