工学系に興味がありそうなお子さんに、高専と中高一貫校どちらが向いていそうか、高専を受験するか中学受験をするかお悩み中でしょうか?
高専に進めば早くから専門的な学びができ就職にも強い一方、中高一貫校なら一般の公立中より大学受験対策で有利かつ選択肢も幅広いです。ではどちらがより将来において「有利」なのでしょうか?
この記事では高専と中高一貫校の違いから将来の進路、学費、それぞれのメリット・デメリットなどをまとめていますので、高専と中高一貫校のどちらがお子さんにとって有利かを考えるヒントにしてください。
高専と中高一貫校の基本的な違いは?
高専と中高一貫校の基本的な違いをまとめました。
高専とは?
高専(高等専門学校)は5年制の一貫教育が行われており、機械工学や電気工学、情報工学ほか工学系の学科が中心ですが、一部商船学科も置かれています。(※商船学科は5年6か月の一貫教育となります。)全国に国立51校、公立3校、私立4校の計58校の高専があり、高専生の数は約6万人です。
高専では実践的な教育が行われ、3年からは大学レベルの専門的な内容に入ります。ロボコンやプロコン、デザコンなど、全国の高専生を対象にしたコンテストが行われています。
卒業後の進路は就職や高専の専攻科(2年間)への進学、大学編入などの選択肢があります。
参考元:文部科学省「高等専門学校(高専)について」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kousen/index.htm)
中高一貫校とは?
中高一貫校は中学と高校の6年間一貫教育を行う学校で、「中等教育学校」「併設型」「連携型」の3タイプがあります。一般的には中高一貫校といえば中等教育学校と併設型の中高一貫校を指すことが多いです。
特に進学校の中高一貫校では大学受験を意識したカリキュラムが組まれ、英数は中学2年生までに中学範囲の学習を終えて3年生から高1の範囲に進む速習型のカリキュラムとなっています。英語教育や探求学習にも力を入れている中高一貫校が多いです。中高一貫校卒業後は大学に進学するケースが多く、専門分野は大学進学後に学ぶことになります。
高専と中高一貫校の進路を比較!どちらが有利?
早くから専門分野が学べる高専と、幅広い選択肢がある中高一貫校、どちらが有利かは将来どのような進路を選ぶかによって、また本人の希望によっても変わってきます。
将来工学系に進みたいなら?
高専だと早くから専門知識を習得でき、実験や実習を行い実践的な教育が受けられます。一方中高一貫校は大学受験に向けて学力を固める場であり、大学で工学部に進むことになります。
大学進学を考えるなら?
5年制の高専の場合、大学進学を考えるなら卒業後に3年から編入することが可能です。もちろん編入試験の対策が必要です。
中高一貫校は進学校の場合は大学受験に有利なカリキュラムが組まれており、最難関大学も視野に入れることができます。また将来工学系以外の進路に進みたくなったときには高専より中高一貫校から大学受験した方が選択肢が広まると言えます。
大卒・学士を考えるなら?
高専を卒業した場合は①大学編入⇒大卒(学士を取得)と②専攻科に進学⇒学士を取得という2つのパターンがあげられます。中高一貫校を卒業した場合は大学入学⇒大卒(学士を取得)となります。いずれも学士を取得しているので大学院に進学する資格が得られることになります。
就職を考えるなら?
高専の場合即戦力となることから企業からの評価が高く、就職率も非常に高いです。一般的に就職先は高専で得られた技術を活かせるところとなります。
中高一貫校から大学に進学した場合は大卒扱いで、幅広い業界や職種を選ぶことができます。活躍したい分野にもよりますが、有名大学を卒業した方が選択肢も広がります。
大学院進学を考えるなら?
高専の場合は大学編入、あるいは専攻科を出た後に大学院へ進むことができます。中高一貫校に進んだ場合は大学受験 → 大学卒業後大学院へと進むことができます。
高専と中高一貫校の学費を比較!コスパが良いのは?
高専と中高一貫校の学費を比較してみました。
下記の料金はあくまで目安で各校により費用が異なります。その他の項目も学校により異なります。詳細は各校の資料をご覧ください。
高専・中高一貫校の学費(一例)比較表
入学金 | 年間授業料 | その他 | |
---|---|---|---|
国公立高専 | 約8万円 | 約23万円 | 年会費や教科書・教材費で初年度10万~20万円ほか |
私立高専 | 20〜30万円 | 50〜200万円 | 初年度20~60万円 |
公立中高一貫校 | 0~6千円 | 無料~約36万 ※後期就学支援金受給対象なら無料 |
初年度10万~40万円 |
私立中高一貫校 | 20〜30万円 | 40〜60万円 | 初年度50~70万円 |
参考:東京工業高専(https://www.tokyo-ct.ac.jp/school_summary/publishment_of_info/costs_info/)
木更津高専(https://www.kisarazu.ac.jp/nyushi/fee/)、明石工業高等専門学校(https://www.akashi.ac.jp/admissions/shokeihi.html)、サレジオ高専(https://www.salesio-sp.ac.jp/main/to_examinee/index.html)、国際高等専門学校(https://www.ict-kanazawa.ac.jp/admissions/tuition/)、近畿大学工業高等専門学校(https://www.ktc.ac.jp/disclosure/etc/)、晶文社 中学受験案内(https://shobunsha-juniorhigh.jp/gakuhi_2023/)
高専の方がコスパが良いケースは?
次のようなケースで高専の方が安く済みやすいと言えます。(例外もあります。)
- 国公立高専に進学(私立より学費が安い。)
- 高専卒業後に大学編入(3年からの編入なら2年分の学費で済む。)
- 受験や編入のために塾・予備校に通わない
高専が合わなかった、他の進路に進みたい、大学受験するので予備校に通う・・・となると、コスパが悪かったりかえって費用がかかってしまうことになります。
中高一貫校の方がコスパが良いケースは?
次のようなケースでは中高一貫校の方がコスパが良いと言えます。ただしケースバイケースです。
- 大学進学希望、東大・京大・医学部など高専からの進学が難しい難関大など(進学校の私立中高一貫校は実績が高い)
- 公立中高一貫校に進学(授業料が無料、ただし学校により倍率が高く入るのが難しい)
- 工学系以外も視野に入れたい(高専に入ると進路の変更が難しい)
高専と中高一貫校のメリット・デメリットを比較
高専と中高一貫校のメリットとデメリットを比較しました。
高専のメリット
高専のメリットとして早くから専門知識が学べること、就職に強いこと、(国公立高専では)コストが抑えられることなどがあげられます。
早くから専門知識を学べる
高専では実験や実習などに早くから取り組み、3年からは専門科目が増えて早い時期から専門知識を学べるメリットがあります。
就職に強い
高専卒業者は即戦力となることからも就職に強いと言われており、有名企業からの求人も多数あります。厚生労働省「令和6年3月大学等卒業者の就職状況」では高専10校を調査したところ、就職希望率57.8%で就職率は100%、10月段階で高専男子の就職内定率が91.8%と大学(74.8%)、短大(女子39.9%)、専門学校(52.9%)と比べると早い時期に内定を獲得できていることが示されています。
参考元:厚生労働省「令和6年3月大学等卒業者の就職状況」公表資料(https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001255622.pdf)
コストを抑えられる
私立高専の学費は高額になりますが、国公立高専なら入学金や授業料は抑えめ、また中学受験、大学受験より塾代を抑えることができます。一般的に有名中学受験塾や大学予備校の学費は高額です。
高専のデメリット
中高一貫校と比較したとき、高専のデメリットとして学校の数が少ないこと、大学受験が難しいこと、他分野の転向が難しいことがあげられます。
数が少ない
高専の数は全国で58校(令和6年度)しかありません。神奈川県など高専がない県もあり、高専に通いたければ他の都道府県に通う必要があります。一般的に高専入試の難易度は高いです。
参考元:文部科学省「高等専門学校(高専)について」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kousen/index.htm
一般的な大学受験が難しい
高専の数学は進みが早く1・2年生で高校内容を習い、3年からは大学数学に入ります。また3年からは専門科目の比重も増え、大学受験向けのカリキュラムではありません。3年修了後に大学受験も可能ですが中高一貫校に比べて大学受験は難しいと言えます。なお高専卒業後に(主に)大学3年から編入することができます。
文系や他の分野へ転向が難しい
高専は工業系、商船系と分野が限られており、将来文系に進みたい、他の分野に進みたいとなったとき、転向するのが難しいです。
中高一貫校のメリット
高専と比較した中高一貫校のメリットとして、大学受験に向けた学力がつけられること、幅広い選択肢があること、高校受験がないこと、大学受験したことを武器にできることなどがあげられます。
大学受験に向けた学力がつけられる
中高6年間の一貫教育で高2までには高校内容を終えて、大学受験対策に時間を割くことができます。特に私立の中高一貫校は難関大学の進学実績を意識しており、補習などのサポートも手厚いところも多いです。ただし学校により差があり、入学後に本人がどれだけ努力するかにもよります。
大学受験で幅広い選択肢がある
中高一貫校からの大学受験においては工学系以外の選択肢もあり、工学系以外の理系や文系、国際系、芸術系、医学部など高専では基本的に選べない進路に進むことができます。文系・理系の選択は高1、2年で行われることが多く、それまでに将来の進路をよく考える時間があります。途中での進路変更も比較的しやすいです。
高校受験がない
中高一貫校に入れば基本的に高校受験はありません。のびのびと中学生活を送ることができ、受験のために全教科の内申点を上げようと神経質になる必要がありません。ただし中高一貫校でも高校への内部進学で一定の評定は求められます。また公立中高一貫校の受検では評定も重視されます。
大学受験したことを武器にできる
編入より「受験」して大学に入ったことを重視される場面もあります。
中高一貫校のデメリット
中高一貫校のデメリットとして中学受験のハードルが高い、(私立では)学費が高いこと、大学受験の負担が大きいことがあげられます。
中学受験のハードルが高い
中学受験は小4から本格的な対策が必要となります。まだ自学自習が難しい小学生に小学校とはかけ離れたハイレベルな中学受験の勉強は、親子どちらにも大きな負担になることがあります。特に難関校や人気の公立中高一貫校の受験(受検)は非常に厳しいです。受験に失敗したときのダメージも大きく、万一の場合のプランも考えておく必要があります。
学費が高い
特に私立中高一貫校は学費が高いです。初年度だけで100万円を超えることも珍しくありません。
大学受験の負担が大きい
進学校の中高一貫校では大学受験に向けたカリキュラムが組まれており、勉強の進みが早く、難易度も高いです。さらに高校からは本格的に大学受験に向けた対策も進める必要があり、学校だけでは足りなければ塾・予備校にも通う必要があります。
高専と中高一貫校、どちらを選ぶべき?
工学系に興味がある小学生やそのご家庭にとって、高専と中高一貫校どちらが向いているかはケースバイケースです。どのような人に高専あるいは中高一貫校が向いているかをまとめました。
こんな人は高専向き!
高専(工業系)は次のような方に向いています。
- 将来工学系に進みたい
- 早く専門的な知識を身につけたい
- 実験や実習に興味がある
- 卒業後は就職を視野に入れている
- 国公立高専で学費を抑えて、工業系大学に編入したい
高専=就職のみではなく、卒業後大学に編入、さらに大学または専攻科から大学院へ進学するという道もあります。
こんな人は中高一貫校向き!
次のような方は高専より中高一貫校が向いています。
- 工学分野に興味があるけれど、幅広い選択肢も持っておきたい
- 中学受験の勉強に意欲的
- いろいろな分野に興味がある
- 大学進学を前提に考えている(進学校)
- 教育費にある程度余裕がある
公立中高一貫校なら費用を抑えることができますが、高倍率の学校も多いです。
まとめ
高専と中高一貫校のどちらが工学系に興味のあるお子さんに有利な選択肢かについて確認してきました。それぞれ異なる魅力と将来の選択肢があります。
大切なのはお子さんが「今どんなことにワクワクしているか」「どんな学び方に向いているか」「将来どうなりたいか」を一緒に考えることです。
この記事が進路を選びのヒントになれば幸いです。
高専
<特徴>
5年制、工業科中心、専門知識を早くから学べる。実験や実習が多い。
<進路>
就職、大学編入、専攻科など
<学費>
国公立が多く比較的安い
<大学受験>
不利
<向いている人>
将来工学系に進みたい
早く専門的な知識を身につけたい
実験や実習に興味がある
卒業後は就職したい
工業系大学に編入したい
中高一貫校
<特徴>
進学校は速習カリキュラムで、大学受験に向けた学力を養成できる。
<進路>
大学進学など
<学費>
私立が多く高い(公立は安い)
<大学受験>
有利
<向いている人>
幅広い選択肢を持っておきたい
中学受験の勉強に意欲的
いろいろな分野に興味がある
大学進学が前提
教育費にある程度余裕がある
高専と中高一貫校のどちらが有利かというより「どちらがお子さんに合っているか」が重要です。お子さんと話し合いつつ検討してみてください。
中学受験対策や高専受験におすすめな塾も知りたい方は次の記事を参考にしてみてください。