さまざまなニュースですでに取り上げられていますが、PISA2018年の調査では2015年時の調査と比較し、読解力において前回より低下しているという結果になりました。
なお前回高かった数学的リテラシー・科学的リテラシーは、今回の調査でも世界でトップレベルという結果でした。
PISAとはそもそも何なのか、日本のPISA得点と順位の推移、考えられる原因についてまとめました。
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PISA2018年調査で日本人高1生の読解力低下
lumenbriteによるPixabayからの画像
PISAとは
PISA(学習到達度調査)はOECDが進めている国際的な学習到達度調査です。3年ごとに実施され、15歳児(高校1年相当学年)を対象に「読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシー」の3分野について調査します。
OECD加盟国は現在37か国です。
OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)… 経済協力開発機構
PISA(ピザ、Programme for International Student Assessment)… OECDが実施している国際的な学習到達度調査
PISA 日本の順位・得点推移
PISAにおける日本の順位と得点の推移を下表にまとめました。(国立教育政策研究所(外部リンク)の資料をもとに作成しています。)
実施年 | 読解力 | 数学的 リテラシー |
科学的 リテラシー |
---|---|---|---|
2000年 | 522点 8位 |
ー | ー |
2003年 | 498点 12位 |
534点 4位 |
ー |
2006年 | 498点 12位 |
523点 6位 |
531点 3位 |
2009年 | 520点 5位 |
529点 4位 |
539点 2位 |
2012年 | 538点 1位 |
536点 2位 |
547点 1位 |
2015年 | 516点 6位 |
532点 1位 |
538点 1位 |
2018年 | 504点 11位 |
527点 1位 |
529点 2位 |
※2015年よりコンピュータ使用型調査になっています。
ちなみにIT教育先進国として有名なエストニアは、読解力1位、数学的リテラシー3位、科学的リテラシー1位と全般的に良い成績をおさめています。
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PISAの読解力 低下した原因は?
インターネット上ではさまざまな意見が出ているようです。
- 今の教育が悪い
- 読書をさせていない
- 英語やプログラミングよりまず国語力
- スマホが悪い
こういった悪い結果を受けると「〇〇が悪い」という話になりがちです。
今の子どもは本を読まなくなった…といいますが、その「本」というのはどのような本なのでしょう。今の大人が中高生のときに読んでいた本は小説が多いのではないのでしょうか。
今どきの中高生も「本」といえばたいていは小説を指すようです。中には哲学書や心理学、科学に関する本を読んでいる中高生もいますが。
小説を読むことで文章から場面を想像する力、人の心情を想像したり理解したりする力を養ったり、実際には経験しなくても他人の経験に触れたり、時代を超えて当時の出来事をあたかも経験したかのように知識や心を豊かにしたり、良いことが多数あります。
しかし小説を読めば単純に読解力が上がるのでしょうか?
読書(小説)好きのお子さんは小学生でも結構いるとは思います。塾でも授業が始まる前、熱心に本を読んでいるお子さんがいますが、その子たちの読解力が高いのかというと、「小説・物語文」に関しては全然読まない子に比べれば高いように思います。
それでは説明文ではどうかというと、微妙です。読書好きな子が「この文おもしろくないから問題が解けない」というのです。
小説家の文章は洗練されていますから、大人向きのものでも読みやすいです。しかし説明文となると(国語の先生の文章はわかりやすいですが)かなり読みづらいものです。
そんなわけで読書すれば読解力が上がると単純には言えないと思います。
新聞ならどうかというと、こちらもアウトプットを行っていれば理解できているかどうかがチェックできますが、「ただ読んでいるだけ」で終わっているなら読解力アップには役立ちません。
1年以上某新聞の天声人語を200字にまとめる訓練をしていたという小学生がいましたが、なんとなくまとめているだけで言葉の意味は全然わかっていなかったこともありました。表面だけそれらしいことをやっていても、読解力につながるとは限らないです。
PISAで求めらるリテラシーに対応できていないのが原因
本を読めば読解力が上がるとは限らない、だからこそ読書量の低下がPISA読解力低下の元凶と単純には考えられません。
PISAで求められる読解力は得られた情報から必要な部分を抜き出し、それを文にまとめるような「リテラシー」です。技術といってもいいでしょう。「読解」ですがどこか理系っぽい。問題を見ればIT先進国のエストニアが高得点というのも納得できます。
そもそもPISAの読解力ってどんな問題?
そもそもPISAの読解力ではどんな問題が出ているのか知っている方が少ないのではないかと思われます。PISAの問題は新聞や小説さえ読んでおけば解けるようなものではありません。
こちらに問題例が掲載されています。
文部科学省 国立教育政策研究所「PISA 調査問題例」(外部リンク)
例えが悪いかもしれませんが、クイズ問題をよく聞いて正解を答えるような、そんな読解力に近いように思います。長編小説や難しい新聞を読んでいても(どちらも「ためになる」ことなんですが)こういう問題に対応できないです。
また読書によるインプットだけでなく、そこからわかったことをまとめるようなアウトプットも必要です。
こういった問題を解く訓練、自分の意見をすぐに言える訓練をしていれば、高得点をとれるようになるかもしれません。(いわゆる適性検査タイプの問題を解く訓練。)
実際には義務教育段階でもプレゼンやディベートをしたり、さまざまな取り組みが行われています。しかしまだ量が足りないのかもしれませんね。
学校でも読書に力を入れている
上でも述べたようにPISAの読解力低下は、単純に「読書量が足りないから」の一言で片づけられないと思われます。
確かに読書量は減少しているのかもしれません(大人も含めて)。それでは今の子どもたちは学校で英語やプログラミングの勉強ばかりさせられてるから…と最近の教育風潮が元凶とかそんなことはありません。
それをいったらIT先進国のエストニアの好成績の理由が説明できなくなります。
実際に生徒から聞く話ですが、読書に力を入れている学校も結構あります。
読んでほしい本を生徒一人一人がみんなの前で発表したり、読書量を増やすような取り組みをしている学校もあります。私の友人でも本の読み聞かせを小学校で行っていたり。結構子どもたちも楽しそうです。
学校の先生方も読書に関して、いろいろ工夫されています。
スマホの使い方には問題あるかも…
今の中高生はスマホを使っている子も多いのでITリテラシーとか高そうなのですが、意外に低い?
生徒から話を聞く限りではSNSとYouTube動画に偏っている印象です。誤った情報に振り回されてしまうことも。
せっかくの便利なツールなので、使い方をもっと大人が伝える必要があるでしょう。て
まとめ
PISAの読解力低下に関しては、問題例を見るとわかりますが単純に読書不足が原因とするのは短絡的でしょう。というか読書量増やしただけであの問題の点数が上がるとは思えないです。(どんな文を読むのかにもよるのでしょうが。)
もし「PISAの読解力=世界の求めている読解力」を上げるのなら、リテラシーを上げる教育をしないといけない。だからプログラミング教育=プログラミング的思考を養う教育が求められています。
いわゆる論理的思考力、意見をまとめる記述力を養う機会を増やせば、スコアも上げられると考えられます。結局のところプログラミング的思考につながってしまうことになります。
従来より教えていた学校の国語の授業で形式では対応できない「リテラシー」が、世界的には今は求められている。だから新しい教育が必要ということになるのでしょう。